

第2回
「糖化」は「老化」
アンチエイジングに効果的な生活とは?
同志社大学 生命医科学部 糖化ストレス研究センター
八木雅之 チェア・プロフェッサー教授
糖化反応を抑制する頼もしい食品素材は
スーパーでも買えます
食べることによって糖化を抑制できる食品があるのですか?
糖化反応抑制素材(野菜、ハーブ)
ベスト15/211種類(HSAモデル系)

そういった一般的な食品で糖化が抑制できることを憶えておくといいですね。
八木教授
食材さえ工夫すれば、普通の食事やティータイムに取り入れるだけで糖化を抑えられますから、ぜひ実践していただきたいです。さらに言えば、しっかりと副菜をとる食事がグルコース・スパイクを抑えると前述しましたが、その副菜に抗糖化素材を使えば、食後高血糖と糖化反応の両方とも抑えられるので、まさに一石二鳥といえるでしょう。
ここまで糖化を進めないための予防方法をお聞きしてきましたが、すでに糖化により体の中に溜まっているAGEsに対処する方法はありませんか?
八木教授
AGEsの値が高い人にとってはそれが気になると思います。残念ながら、現時点では体の中のAGEsを分解・排泄する方法は確立されていません。しかし研究レベルではAGEsを分解する作用のある物質が見つかっていますので、今後はそれが人間の体内でも有効かどうかを確かめていくことになるでしょう。将来は老化に関与する体内のAGEsを解消できるようになる可能性もありますので、今後も研究に期待していただければと思います。
老化対策には「糖化ストレス」が重要なキーワードであり、日常の食生活とちょっとした運動習慣でそれを軽減していけるというのはとても興味深く実践的なお話でした。糖質と健康との関わりはこれからますます注目されそうですね。
八木教授
健康のために糖を上手に摂取していくことに関心が高まるとよいと思います。糖化ストレスを取り上げると、どうしても糖はすべて悪いものだという印象を与えてしまいます。しかし糖質は重要な栄養素でもあります。糖質の中には血糖値を上げやすいもの、上げにくいものがあります(下表)。また糖質の摂り方を工夫することでグルコース・スパイクを抑えることもできます。そういった知識をもって、賢く選択しながら糖化ストレス対策を行っていくことが、若々しさの維持や健康寿命を延ばす上でとても大切ではないかと考えます。
糖の種類 | GI値(血糖上昇指数,%) |
---|---|
グルコース | 100 *1 |
マルトース | 105 *1 |
ショ糖 | 59 *1 |
トレハロース | 37.7 *2 |
*1:青江誠一郎ほか(1982)『食物繊維-基礎と応用-』第一出版.
*2:試験結果の平均値。ただし日本人の場合、トレハラーゼ活性に個人差があるため、約半数の人は血糖値がそれほど上がらないが、残りの半数はグルコース摂取と同レベルにまで上昇する。
詳細を記載した論文はこちら:
https://nutritionj.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12937-017-0233-x
今後の研究に期待します。本日はありがとうございました。
取材日:2017.2.2
八木雅之 チェア・プロフェッサー教授
同志社大学 生命医科学部 糖化ストレス研究センター


略歴
- 1989年
- 京都府立大学大学院 農学研究科 博士課程修了(農学博士)
- 1990年~1992年
- (株)ワイエムシィ 研究部
- 1992年~2011年
- アークレイ(株) 研究開発部、商品開発部、新規事業部など
- 2011年~2012年
- 同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー講師
- 2012年~2015年
- 同上 チェア・プロフェッサー准教授
- 2015年~2016年
- エイキット(株)生命医科学検査センター ゼネラルマネージャー、糖化ストレス研究所、所長
- 2016年~取材時
- 同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授
主な各種委員など
(2017年4月1日現在)
- 一般社団法人 日本抗加齢医学会 評議員
- 一般社団法人 糖化ストレス研究会 理事
主な研究歴
- HPLCによる測定法や分析カラム製品の研究開発(1990年~1992年)
- HbA1c測定法の研究開発(1992年~2001年)
- 糖尿病患者向けの機能性食品・化粧品などの研究開発(2001年~2005年)
- 糖化対策や抗糖化素材の研究(2001年~現在)
- 糖化ストレスと老化・疾患の関係についての研究(2011年~現在)
- 糖化ストレスの測定・評価法ついての研究(2011年~現在)
八木教授
これまでに私たちが500種類以上の食品素材について調べた結果、野菜やハーブ、お茶などに糖化反応を抑制する作用をもつ「抗糖化素材」が見つかっています。実験では、たん白質とグルコースを混ぜた反応系をつくり、そこに食品素材の抽出物を入れていきます。すると糖化反応によって生成するAGEsが減ってきます。さらに抽出物の濃度を高めていくとAGEs生成を半減できるポイントが見つかります。この実験では、その濃度が小さいほど素材の持つ抗糖化作用が強い(少しの濃度で作用する)ということになります。野菜・ハーブで調べた結果(下図)をみると、モロヘイヤやサニーレタス、米なすなど、スーパーでおなじみの野菜にも糖化抑制作用の強いものがあるとわかりました。また、いわゆる健康茶やハーブティーでは甜茶やどくだみ茶などに高い抑制効果を確認しています。